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燃ゆる女の肖像のmorioのネタバレレビュー・内容・結末

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

18世紀、フランス、ブルターニュの孤島が舞台。時代と良家のしきたりに抑圧され続けてきた娘エロイーズは、肖像画家で自由で才能あふれる女性マリアンヌと出逢い、人を愛するということを知る五日間。心も身体も深く通じ合った二人はやがて、オルフェウスの振り返りを経て、永遠の別れを告げるのでした。

僕は物語の最後に見せた、劇場でのエロイーズの涙に
心を打たれました。ギリシャ神話でのオルフェウスの
ように振り返りたいのにもう振り返ることが許されない
彼女の気持ちを思うたび、心が締め付けられ苦しく
なる。その涙のために物語があったような気がして。

☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜

タイトルにある「燃ゆる女」は、劇中二回出てきます。
一回目は前任画家が描いた肖像画を暖炉で焼くシーン
二回目は祭りの夜に、エロイーズの服に焚き火の火が
燃え移ったシーン。特徴的なのはこちらの二回目の方

物語の冒頭、‪”‬暗闇に燃える女性の絵‪”‬が出てきます
がこれは、マリアンヌがそのシーンを回想して描いた
もの。この炎は彼女のエロイーズに対しての愛の炎で
あり激しい情愛のトリガーだったのだと思います。

叶わぬ愛の炎をスカートに燃え移る炎として表現した
センスが秀逸ですし、作品自体が一つの絵であり
芸術なんだという演出が映画作品として提示されて
いる気がしました。鑑賞後に一枚の絵を堪能したかの
ような不思議な感覚を覚えたのも、そんな理由だった
ように思います。


少し脱線しますが、
ハンマースホイというデンマーク🇩🇰の画家がいます。
グレーを基調とした抑えた色調で、時間の止まった
ような静謐な空気を感じさせるようなタッチが作風
です🎨

僕は昔から彼の絵が好きで、レプリカでも良いから
いつか自分の部屋に飾れたらなぁと思う画家さん
なのですが、今作を観ながら彼の絵がずっと頭の隅に
浮かんでいました。

孤島にたたずむ屋敷にある静謐で美しい空気感が、
彼の作品を思い起こさせたのかも知れません。
僕がこの作品を一枚の絵のように感じられたのは
ハンマースホイとの共通点を感じたことも大きかった
かも知れませんね👨


海岸線の前に立つドレス姿の二人のシルエットの
美しさよ!二人の情愛の交換。コルセットを外し
蝋燭の炎の下、肌と肌を絡ませるシーン。性別など
遥かに越えた行為の美しさは本当に尊かった✨
この作品を思い出すたびに絵画のような彼女たちの
シーンが思い出されるのだと思います🖼
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