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ザ・クリエイター/創造者のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
3.8
 イギリス発ウェールズの日本文化ヲタクだったギャレス・エドワーズは『スター・ウォーズ』シリーズに魅了された生粋のSF映画ヲタクだが、2014年にハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の監督に抜擢されたことが縁となり、その僅か2年後に『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の監督に大抜擢される。このゴジラでスター・ウォーズを引き当てた驚くべきサクセス・ストーリーは奇跡のような出世物語となったが、スター・ウォーズEp7~9のトリロジーよりもスピンオフの方が私には数倍、魅力的に思え、JJ・エイブラムスの正調な物語よりも私はギャレス・エドワーズが提唱した滅びの美学の外連味にこそ惹かれてしまった。そんな彼の次作の動向がちっともアナウンスされないまま7年の歳月が経過したが、ようやく新しい物語が届けられて嬉しい。50年後の未来。人類を守るために作られたはずのA.I.が突如反旗を翻し、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。10年もの人類とA.I.との壮絶な戦いが続く中、高度なA.I.兵器を生み出した創造主の暗殺のミッションが下された。テレンス・マリックのエモーショナルな世界観そのままに、愛するマヤ(ジェンマ・チャン)を失った主人公の哀しみはそう簡単に消えそうにない。

 いわゆる『ブレードランナー』以降のA.I.と人間との交わりの物語だが、見方によればアダムとエヴァが登場した旧約聖書の物語にも見えて来る。敵地へ潜入した退役軍人のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、クリエイターの居場所を突き止めるものの、そこにいたのは少女の姿をした半分機械のヒューマノイドだった。ここで少女を少年と読み違えるのはある種のミスリードで、少女=兵器が人類を危機に晒すアイコンとして登場し、敵味方双方が彼女の命を執拗に狙う。「ニルマータ」とは、ネパール語で「創造者・救世主」と言う意味で、人類の未来の鍵を握る少女が知る真実とは?というのが物語上の大きな主題だが、ここでギャレス・エドワーズは『スター・ウォーズ』シリーズの欄外に零れ落ちたSF物語に全力を注ぐ。漢字表記がモロに登場する船体の場面では、様々な制約下で『スター・ウォーズ』シリーズでは出来なかったことを一つ一つ粛々とこなす印象で、潜水艦や戦闘機の到着が指し示すイメージがアメリカでもヨーロッパでもなく、アジアで勃興する様は明らかにSF新時代を予期させる。アジアを照射したSF的なビジュアルは『スター・ウォーズ』シリーズには見られなかった新機軸で、ギャレス・エドワーズのビジュアル上の冒険は目を見張るものがある。
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