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人体の構造について(原題)のarchのレビュー・感想・評価

4.1
パリの複数の外科手術の現場及び院内の様子を記録したドキュメンタリー。これまで医療ドラマなんかで観てきた手術の様子を遥かに超えた、「人体とは血肉であるという存在感」や医療現場において要請される無機質なオペレーションに仰天した。

終始「そこってそんなに血が出ていいんですか?」とか「手で強引に開いて問題ないんですか?」みたいな血の気の引く映像が展開されていて、驚かされる。およそ構成と呼べるものがない本作は、そのインパクトある人体の映像の羅列によって間を持たせる。その羅列は病院という場で日常的に発生する「人体の構造への理解」を示すものだ。
彼らにとってはそれは、歩き慣れた旅程だ。しかし我々素人にはブラックボックスでしかない体内の映像はアドベンチャーに近いものになるのだ。

印象的なのは吸引用のチューブを落としてしまったシーン(多分膀胱ら辺の手術)。医療ドラマ的なチームワーク劇じゃなくて、ちゃんと焦って人に罵詈雑言が浴びせている(映像では大量出血してるシーンが流れる)シーンが妙にリアルな肌触りで胃がキュッとなった。
その寝台には人体があって、内側に入り込む繊細な作業であるのに、平常運転として慣れきっているが故の人体の「モノ化」みたいなも感じられるシーンであった。


人体の神秘!という感じよりも我々は人体をここまで「モノ」として理解して見せたという技術的な進歩の賛歌になっていたように思う。
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