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百円の恋のarchのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
4.0
やりたいことを見つける、そのフレッシュさとその気持ちが駆動させる人生や営みの快活が安藤サクラの闇雲さを通して描かれていく。

本作はニートがやりたいことを見つけて、恋をして、ボクシングという「人生の目的」を見つけていく話になっている。肝心なのは、決してその根本に「ニートである自分への嫌悪」みたいな内省的な心情が全く描かれていないところ。
つまり彼女の根本的な気質は変わっていなくて、「好き」との出会いが、彼女の人生を好転させていったという描き方になっているのだ。
多分ニートの主観に寄り添えば寄り添うほど、そのニート脱却の流れはシームレスで、気づけば「変わっている」のだと思った。
「出会い」の力を良くも悪くも賛歌し、そういった人と人の関係の芽吹きを、総じて「恋」というのかもしれない。

主要人物全員癖が強いのも本作の特徴。なんなら安藤サクラ演じる一子がなんだかマトモにすら見えるメンツだ。



憧れて輝いて見えたリングに彼女が、最終的には登る。その勝敗や興行の大きさとは関係なく、尊い瞬間。バナナマンの最終試合だったのに対して、一子のは初試合。結局彼女は定職には着いてないわけだけど(アマチュアボクサーって収入どんなもん?)、闇夜に消える画に対して(クリープハイプの曲も相まって)それでも彼女の人生は開けているという感覚が伝わるラストだった。
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