Kuuta

ラブ&ポップのKuutaのレビュー・感想・評価

ラブ&ポップ(1998年製作の映画)
3.8
カーブと直角移動を繰り返し、ループを続ける。冒頭の夢でカメラは人の足や脚立の間を通り抜け、「井の頭線のトンネルの先」にある渋谷へ辿り着く。「天気の子」同様、外部に閉じたセカイ系は山手線の円環に象徴され、女子高生はその中を彷徨う。

主人公は「指輪」を求めて援助交際を重ねるが、浅野忠信の説教を経て、何かを求め続ける自分を相対化し、フィルムという、現在を封じ込める円環の道具を捨てる。

最後に見る夢からはトンネルが消えている。線路は無限回廊のような渋谷ではなく、ドブ川にその進路を変え、エンドロールで女子高生はループを脱出する。

「不安を抱えながら川を進む若者」の姿は、ナディア第1話のラストとも重なる。但し、ナディアは進行方向にある太陽をはっきり見せるが、今作はカメラが人物側しか向かないので、彼らの未来は不明瞭になっている。

同じ場所を行ったり来たりするブランコ。コンパクトカメラをぶら下げ、イヤホンで音楽を聴く主人公。シンメトリーな構図、斜めのショット…。演出も編集も庵野節全開だ。歌謡曲の使い方も。

会話のカットバックは非常に少なく、他者とのコミュニケーションは成立していない。基本的にカメラは被写体により過ぎているか、主観視点。今作は独りよがりな仮想現実=AVとも言えるが、最後で映画らしい映像に戻ってきて、生身の人間が復活する。
(ラストの長回しだけはフィルムで撮っているらしい)

「男は何故恥ずかしげもなく人形に笑いかけられるのだろう」という台詞は旧劇から続くオタク批判だろうか。新劇場版では手を繋ぐ動作が重要なモチーフとなっているが、今作のレンタルビデオ屋で繋がれた手は実に酷い目に遭っている。

このシーンの援助交際の相手は、劇中の男の中でも一番気持ち悪いと思うが、妙なタイミングで愛想笑いしてしまい、その事に自分で気付いて会話に詰まる感じに共感してしまって、大変居た堪れない気持ちになった。75点。
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