歌の世界観からインスピレーションを得てその歌の世界を映画化するっていういのは日本でも大手の映画会社がひんぱんにやってますよね。けっこうお金かけていわゆる旬の俳優やスターを使ってヒット作もいっぱいあると思います。今作は90年代のKポップを元に発想してその世界観を映画化したそうですけど地味なインディーズ作品です。「ミナリ」に出てるハン・イェリが出てますけど後は見たことない俳優ばかりでした。
普遍的な喪失と、いかにしてそれを乗り越えるかということをやってますが、タイトル通り幻想というか妄想のように亡くなった人がまだ存在しているかのように振る舞ったり会話したりというアプローチです。実は昨日「手紙と線路と小さな奇跡」という韓国映画を見たんですけど、それにも亡くなった人が妄想のように登場してました。そういうアプローチの韓国ドラマも見たことあります。日本でもなんかあったような気がします。それはきっと多くの人たちにとっての願望なのかもしれませんね。親しい人を亡くした場合、もうちょっとその人と会っていたい。なんでもいいから言葉を交わしたい。映画ではそんな願望を実現して、映画を作る人も観る人も喪失を乗り越えるために幻想にすがりつきたい。そんな思いが余すことなく込められてるのかなあって思いました。
これを観る限り、なかなかの有望な監督さんだとは思うけど、10年前の今作を作ったきり新作が出せてないみたい。なかなか厳しいもんですね。感覚が日本映画っぽいところもありましたね。何かしら影響受けてると思います。しかし、韓国映画はなんといっても、メジャーもインディーズも俳優の演技によって、または感覚によって大きな違いを生み出すことができるということができるんじゃないでしょうか。感情表現が強いですよね。おとなり同士のアジア人で見た目も似てるのにこうも違うのかと思わされることが多々あります。
今作では最初に亡くなる女性の親友と元彼、それから姉が登場して親愛なる今は亡き人に対する思いが錯綜し、感情が複雑に揺れ動く様を俳優たちが全身で演じているのが印象に残りました。地味ながら、なかなかの佳作だったと思います。