どするん

ポッド・ジェネレーションのどするんのネタバレレビュー・内容・結末

ポッド・ジェネレーション(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます


面白かった、こんな未来もありかもと思った。

そんな簡単に実用化できる技術じゃないかもしれないけど、色んな選択肢が増える人工子宮は夢もあった。

日比谷シャンテで公開日に見たが、劇場外に実際撮影で使われたポッドがあって急に現実味が増したのもある。



生物学的に女性が妊娠して出産するのが当たり前の今、身重の身体で約10ヶ月もの間、生活をして激痛に耐えながら出産することが親としての意識を芽生えさせる側面もあるだろうし、父親も妻を気遣い、神経を尖らせる期間があって徐々に親になっていくとも思える。

最初はポッドでの妊娠に反対していた植物学者のアルヴィーの方がレイチェルよりもポッドに愛着を持って父性のような感情が生まれていく。

実際にポッドでの妊娠ができたら、男性の方が親としての意識を強く持てるのかもしれない。


もちろん、子どもできた瞬間や生まれた瞬間に親になるわけではなく、ゆっくり親としての意識を獲得していくものだとは思うけど、ポッドでの妊娠もそのグラデーションはあるのかもしれない。

子どもへの副作用としての影響や、親の意識の問題や、子どもを人工的に量産できることの倫理的問題などポッドを使うことによってたくさん問題も生まれる。

レイチェルとアルヴィーはかなり親としての適性がある方だったろうし、出産までの感覚が薄れることで育児放棄みたいな親の方が増えそうだなとは思った。

一方で女性のキャリアに可能性が広がることや男性の意識が変化すること、安定的な出産や人口増加などメリットもたくさんある。




自然を商品にしたことで人や社会は変わってしまったとアルヴィーが考えるように妊娠も商品にしてしまうことで失われるものもきっとある。

でも、2人が自宅出産を選んだように、人工子宮があればこそ、相対的に自然妊娠がより意味を持つのかもしれない。

映画の中では夢がポイントになっていたが、出産日も性別も妊娠自体も計画されたものの対象物として不確定で意味のない夢がレイチェルの意識に大きな影響を与える。

ポッドで生まれた子どもたちが大きくなって、"ポッドジェネレーション"と呼ばれる世代がどうなるか気になる。自然を嫌いAIに頼り不確実性を失った人間から創造性は生まれないように思う。

それでも仕事も娯楽も豊かに飽和してあえて子どもを持たない選択肢も持てる現代では人口減少が進む国も多く、妊娠における技術革新は望まぬ妊娠や不妊治療にも有効な選択肢として夢があった。





鳥の囀り、差し込む光、打ち寄せる波、風に靡く木々

最後あんな簡単に生まれちゃうのはちょっと不自然だったけど、自然の中ですやすや眠る3人は幸せそうだった。






AI含め技術革新が進むのは間違いない中で盆栽が出てきたのがすごく良かった。自然を商品にした時に盆栽は高い価値を持つんだろうと思えた。
どするん

どするん