ひろぱげ

ポエトリー アグネスの詩 4K レストアのひろぱげのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

メインのレビューはこちら↓に書いたので、ここではネタバレありきで周辺の考察をあれこれと。
https://filmarks.com/movies/37720/reviews/160553937

【登場人物たちのその後に思いを馳せてみる】
ミジャは川で遺体となり見つかる。詩の先生や仲間たちは悲しみ、それを詩にする。
孫のジョンウクは警察で全てを自供し、「仲良し6人組」にも波及する。
6人組の父親たちは動揺し、必死に工作に走るが世間の非難が集中する。ミジャやジョンウクの母親への怨みを抱く。
被害者アグネスの母親にも世間からの誹謗中傷が殺到する。村には居られなくなる。
川は静かに流れ続ける。

【孫のジョンウクと6人組について】
ミジャから注がれる愛情は分かっているが、思春期男子特有の「うっせーな」という態度で祖母の世話焼きを疎ましく思ってはいる。
それでも、ゲーセンで手を引かれ素直に付き従ったり、作ってくれたご飯やファミレスのピザはおとなしく食べたり、出しっぱなしのものを嫌々ながらも片付けたりと、普段はそれなりに「いい子」である。彼の友人達「6人組」にしても、ミジャに対してはいちいち会釈をしたりして、表向きは「いい子」。しかし、そんな「いい子」達の裏の顔が実は残忍で無分別であることは往々にしてある。やはり彼らはまだまだ「子供」で、それであるが故に残酷な行為も平気で行ってしまったのだろう。

【6人組の父親達と学校】
日本でのいじめ事件などでもよくある隠蔽体質というか事なかれ主義というかは、こうやって見せられるととても腹立たしいものがある。ミジャが抱いている「美しい物を探そう」という気持ちとは正反対で、その描き方がイ・チャンドンらしいというか、「オアシス」にも通じるなと。
特に最初に話しを持ちかけてきたカラオケ店経営のおっさんなんかは、ミジャに金が無いのを知っていながら、「自分達がその分を負担するなんてとんでもない」といった感じでゲスいというか人間臭い。

【ミジャとアグネス】
映画冒頭、病院でミジャとアグネスの母親は出会っている。その時には、「孫と同じ学校の女の子が死んだ」という、どこか他人事だったものが、次第に自分の家族の、そして最終的にはまさに自分自身の事になっていく。最終的に詠まれた詩は、ミジャがアグネスと一体化した成果であって、それを思うと何とも言えない気持ちになる。(朗読がミジャからアグネスへと移り変わる演出が凄い)

それにしても、美しく、静かで、壮絶な作品である。
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