Keigo

シークレット・サンシャイン 4K レストアのKeigoのレビュー・感想・評価

4.7
イ・チャンドン監督四作目。
これはもう間違いない。
俺はこの監督の作品が大好きだ。
ここへ来て自分の中でのイ・チャンドン監督の存在感はうなぎ登りで、好きな監督は誰かと聞かれれば確実に五本の指に入る。

配信で観られるものを観終えてしまって、あまりの高得点の連続にいても立ってもいられなくなり、少し遠いけど大森の劇場まで足を運んだ。


これまでの三作品と比べてほんの少しスコアが下がったけどそれでも4.7。もしかして六作品全てが、彼が撮ってきた作品の全てが自分にとって傑作だという奇跡のようなことが起きるのか…?しかも存命の監督で…?

もしかすると今が、自分にとっての映画体験を振り返った時には、特別貴重な瞬間なのかもしれない。

今作もまた言葉を失ってしまうほどに悲痛。下手をすればいくらなんでもやりすぎだと興醒めしてしまいそうな危うさなのに、作品にしっかりと実感と重みがあることがまず凄い。宗教に特に深い馴染みもない出自の自分でも、日本を含めた世界のさまざまに目をやればその存在を無視することは出来ないし、宗教が題材やモチーフとなった作品もこれまでそれなりに観てきたと思う。でも“許すこと”についてのあの重要なシーンで、全く考えたこともない視点というか、決して派手でもなんでもないのに自分にとっては驚くような視点を提示されて、息が止まるような思いがした。

そこに目をつけるその眼差し、描こうとしている主題や物語についての突き詰め方、その洞察の深さに、今作もただただ感嘆させられるばかりだった。


余談ですが、今回足を運んだ劇場で入場する時に「ごゆっくりどうぞ」と声を掛けてくださった方が、俳優の片桐はいりさんにとても似ていて、「まさか本人?…そんなわけないか」と思いながら入場した。映画を観終わって劇場を出る時も「ありがとうございました」とお辞儀をされてやっぱりめちゃくちゃ似てるなと思って帰りながら調べてみたら…なんとあれはご本人!昔から劇場でもぎりの仕事をしていて、今でも時間がある時は映画館の仕事を手伝っているらしい。そのことを知って、なんだかあたたかい気持ちになった。映画から受けた感動にささやかなおまけを付けてもらえたような感覚だった。

サブスク配信のおかけでたくさんの作品に簡単にアクセス出来るようになったのは本当にありがたいことだけど、やっぱり劇場へ足を運ぶ事でしか出来ない体験が確かにあって、それはやっぱり素晴らしいなと。

映画が好きだから、時間と金が許す限り、映画館に行かなければと改めて思いましたとさ。
Keigo

Keigo