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プリシラのエスのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
4.0
”私の気持ちはどうなるの?”が無視され続けた十数年間、何も知らないままエルヴィス・プレスリーという世界に足を踏み入れ、情熱と憧れ、安寧と自己決定権、10歳差のスーパースターというパワーバランスの不均衡さの下、確固たる自分を取り戻すまでのお話。

エルヴィスプレスリーという人物を知らぬが故、ここで描かれる彼をみるとめちゃくちゃレッドフラッグだらけでびっくりしてしまうが、特にそれがすぐ行動に結びつく訳でなく、今日も英雄として語り継がれていて、プリシラ自身の回想録で記していた通り、”そこには愛があった”という限り、双方共ジャッジをせず、寄り添って描き切るというソフィアコッポラの美徳がここではたまらない儚さ、歯痒さを生み出していたなぁと。陣痛の中つけまつ毛を付けるかシーンが物凄くアイコニックで。

主演二人も適役だし、劇中歌たちやスコアたち(Ripping Waters美しすぎ)もめちゃくちゃどタイプで、パステルガーリーが詰め込まれた美術も心を躍らせました。プロダクションデザイナーがナイトメアアリーを手掛けたタマラデヴェレルだと知ってうわなるほどな…と唸ったり。

ソフィアコッポラの描く白人特権的物語に良くないとは思いつつ憧れを抱いてしまうのだけど、恋焦がれて誰かの特別な存在になった時の夢心地っぷりがとても繊細に捉えられてたと思うし、その中で顕になる鬱屈なリアリティがとても好みでした。漁ろう。
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