メザシのユージ

月のメザシのユージのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
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堂島洋子(宮沢りえ)は、作家として成功を収めていたがスランプに陥ったことを機に重度障害者施設で働き出す。陽子(二階堂ふみ)、さとくん(磯村勇斗)といった同僚と共に入所者たちの対応にあたる洋子は、自分と生年月日が一緒の入居者きーちゃんと親身になっていくのだが・・・
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まず、この映画の中でテーマのひとつ「人はなぜ生きるのか?」これは世界中の哲学者が昔も今も考えていることで、現在も答えは出ていない。
何のために生きるのか?人間は社会的な生き物だから何か一つ「これだけのために生きてる」ということはないと思う。簡単に答えは出せない。

もうひとつ、津久井やまゆり園の事件を元にしてるこの物語で観客に突きつけるのは、障害者の人生に意味はあるのか?まず、その人の人生に意味がある無いは本人でない誰かが勝手に決められることじゃない。
昔、親族に重度の障害ある人の話を聞いたことがある。喋ることもできないし、自分でご飯を食べることもできない。それは大変そうだと言うと、大変ではあるがその親族を補助してくれるヘルパーさんやその他、周りの助けてくれる人たち、障害のある親族を通して知り合えた人がとても素晴らしい人たちで、その人たちに出会えたことを幸せに思うと言っていた。多分その言葉に嘘は無いと思う。障害者は社会的なお荷物などではない。

「そんなことは偽善だ」とこの映画の犯人は言うのかもしれないが、繰り返すがそんな事は他人が勝手に決めることではない。

「月」は西洋では、「狂った」「気が触れた」などの意味を持つ。自分は普通だと言う人も心に狂気はもっている、生きる上でその狂気に飲み込まれないことが大切。そして人の命をコストで考えるようになると、この社会は終わると思う。