わみ

月のわみのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.9
ギリギリ見られてよかった!(2024.1.19鑑賞、下書き途中で眠ってた)
石井裕也監督の映画は心を抉られるような感覚になる(いい意味で)

かつて実際に起こってしまった、相模原障害者施設殺傷事件をベースにした作品。
ラストの展開がわかっているからこそ重い。
さとくんが犯行に至るまでの他に、出生前診断、東日本大震災などの問題も出てくる。

まぁキャストの演技がすごい…特に磯村勇斗がやばい。

原作は辺見庸氏の同名小説なのですが。
この映画にもでてくる、重度障害者の「きーちゃん」側から見た視点らしく、登場人物は映画オリジナルの人物が多くまぁまぁ別物っぽい。

こういう社会問題を扱う映画を見ると、どうしたらいいんだろう、と毎回思う。わたしにできることってなんだろう。

さとくんと洋子が対峙するシーンは、私たち観客にも訴えているものがあった。スクリーン越しでも、金縛りにあったように身体が固まって動かないような感覚を覚えた。
(金縛りにあったことはないけど)

他人だから綺麗事が言える、現実はそんなものじゃない、当事者だったらどうしますか?と。

「意思疎通できない人間は心がない。だから重度障害者はいらない。不必要な人間は排除する。」

さとくんの言う、「不必要な人間」とは。
私も見方によれば不必要な人間かもしれないし、将来何か障害を負って不必要な人間になるかもしれない。高齢者問題にもつながるようにも思う。

意思疎通さえとれない重度障害者は何のために生きていますか?と聞かれても私には綺麗事しかでてこない。

さとくん=実際に事件を起こした植松聖死刑囚なんだけれど、どうしてそういう思想に至ってしまったのか、ということも描かれていて。入所している障害者へ暴力を振るう職員、それを見て見ぬふりをしている同僚、施設の所長など。そこから問題は始まっていたんだよな。

もう観てからだいぶ経ちますが、めちゃくちゃショッキングなシーンはずっと脳裏にこびりついてる。(近寄るなと言われていた障害者の部屋の中のシーン)目を背けてしまったし、正直見たくないと思ってしまったけど、それこそ目を背けてはいけない真実なのであって。

障害を持って生まれてきた子供や、出生前診断の話もスルーしてはいけなくて。
出生前診断で、障害がないとわかって嬉しいという感情を抱くことは果たして正しいのか、障害があるとわかって産むのをやめるということは悪なのか、こっちでも答えが出なさすぎて辛い。


実は元旦那のお姉さんが知的障害を持った人で、実際は私より歳上だったけど5歳児くらいのコミュニケーションしかとれないと聞いていた。
常にお母さんかヘルパーさんが面倒を見ていたんだけれど、私も一緒にお風呂入ってあげたことがあって。小さい子供みたいでいつも素直でとても可愛かった。
それだけじゃだめなんですかね。


めちゃくちゃ長くなったけど終わります。
わみ

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