特濃ミルク

月の特濃ミルクのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 2016年の相模原障害者施設殺傷事件を題材にした物語。前もって心の準備はしていたが、それでもなかなかヘビーだった…。

 盗人にも三分の利という慣用句があるが、どうやらこの映画の殺人鬼「さとくん」にも、それなりに「正しい」理屈があったみたいだ。

 ・意思疎通ができない障害者たちは、「普通の人間」と違って「心」というものが宿っていない、単なる「物」である。ただの「物」ならまだいいが、体液、糞便を撒き散らす醜い物体である。その汚いものを世話しなきゃいけない人間がいる。

 ・そんな汚くて醜い「物」に手間とコストをかけるのは社会にとって非生産的な事である。だから最終的にはみんな殺してしまった方がいい。

 ・世の中の人間はみんな綺麗事ばかり並べて、そうした現実の闇に向き合っていない。



 [自分なりのアンサー]

 ほう。
 ①綺麗事だ何だと言われようが、命は「物」じゃねぇよ、ノータリン。仮に障害者が「物」だとして、それを壊す権利がお前にあるのか?お前の手で1から作ったわけでもないだろうが。
 ②あと、世の中には障害者へのコストなんか屁でもないくらいの非生産的な事が溢れている。どうせならそちらの是正に力を注ぐか、自分で何か生み出そうとした方がいい。
 ③それはただの「想像力の欠如」ってやつ。世の中の人はそれぞれ色んな事で悩んで、それにちゃんと自分なりに向き合っている。

 …まあ色々と露悪的な部分もあって疲れちゃう映画だったけど、「命の選別」という深刻な問題提起をするという点では成功していると思った。
 もちろんドラマだからなんだけど、主人公サイドにクリエイター達がいるのが良いね。人間の最大の長所、「想像力」を駆使して、声なき声を聞き、目に見えないものを形にすることで、どんなにちっぽけな「物」にも命を与える仕事だ。簡単にその道を諦めた植松へのアンチテーゼ、カウンター。
特濃ミルク

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