金融アナリストとして働く一児の父で、本業の傍らで「ローリング・キティ」の名前でYoutubeにて個人の投資状況を公開するキース・ギル。コロナ禍にゲーム小売業のゲームストップ社株を購入した彼が、大資本を盾に空売りを仕掛ける富裕層に「ダム・マネー」と揶揄される小口投資家達のムーブメントで対抗する様を描いた伝記映画です。
2021年にアメリカの株式市場を賑わして「金融界におけるフランス革命」と称された騒動を、ベン・メズリッチのノンフィクションを基に『アイ,トーニャ』『クリエラ』のクレイグ・ギレスピーの監督で映画化した作品で、興行収入は2000万ドル程度と伸び悩むもポール・ダノ演じる主人公を中心とした庶民の逆襲の物語が高く評価されました。
『ソーシャル・ネットワーク』の系譜に連なるスタイリッシュな伝記映画ながら所謂「偉人」ではなく散々金融や大資本に煮え湯を飲まされた「大衆」を描き、そのテーマが「セオリーでなく我が道を行く」人を描くギレスピーの資質と呼応します。「断絶」のコロナ禍にあってそれでも人と人との「繋がり」が起こす奇跡が心地良い一作です。