にゃーめん

ダム・マネー ウォール街を狙え!のにゃーめんのレビュー・感想・評価

3.5
原題:Dumb Money=愚かな投資

コロナ禍真っ只中の2020年、ネット掲示板で、ゲームソフト小売り大手ゲームストップ株($GME)の買い煽りをした、"ローリング・キティ"こと、キース・ギル氏の実話に基づく話。

個人投資家vsヘッジファンド(と、ヘッジファンドの繰り人形だったスマホ専業証券会社「ロビンフッド」)の対立が主軸。

つくづく、SNSと株式投資の相性はめちゃくちゃ悪いな〜と思いながら、財布の紐をギュッと締め直すきっかけとなる作品だった。

ある程度の金融リテラシーがあると話の筋を追いやすい。
「踏み上げ」「コール買い」「空売り」あたりの投資用語を押さえてからの鑑賞を推奨。

「ウルフオブウォール・ストリート(2014)「マネー・ショート」(2016)あたりのウォール街周りの話が好きな人にもおすすめ。

米国株は保有していないが、旧NISA時代から国内株を株主優待と配当目的で数銘柄保有している身としては、自分がもしゲームストップ株を保有していたら、どの時点で売り抜けられるか、もしくは売り時を逃して塩漬けする側になるか、と想像しながら展開を見守った。

登場人物達が、コロナ禍で生きる市井の生活者つまり、数年前の自分達と同じ状況に置かれた人々にスポットライトがあたる構成なので、株式投資に馴染みのない人でも共感できるポイントが多めなのがグッド。

ゲームストップ株を買った個人投資家の名前と共に、純資産額が戦闘力のように表示される演出がユニーク。(「C」(2011年ノイタミナ枠で放映)という経済アニメでも似たような演出があったのを思い出した。)

特に病院の看護師として働く、シングルマザーのジェニー(アメリカ・フェレーラ)のエピソードが印象的。

医療従事者として、最初のワクチン接種者となり、コロナ患者で溢れる病院で沢山の人々の命を守って働いていたのに、手当が少額で、95年式のボロ車に乗り続けるほど生活に余裕がないという描写は、コロナ禍に翻弄されたエッセンシャルワーカーの人々を代弁するような存在であったと思う。

"ローリング・キティ"のハンドルネームでゲームストップ株の買い煽りをしていたインフルエンサーの悲喜交々の芝居は、さすがのポール・ダノ!

爆上げしたゲームストップ株を売って、奥さんからの圧を受け、生活を楽にしたい気持ちがありながら、ここで売ってしまうと、diamond hands=ガチホの小口個人投資家達を裏切ることになるため、信念を曲げず自分もガチホし続けるという非常に複雑な立場の役柄がハマり役であった。

あらゆるバージョンの猫ちゃんTシャツと帽子(「CAT」のロゴのニット帽は、日本キャタピラーのCATなんですけど(笑))が出てくる度にニヤニヤしてしまった。
ナードな役柄がとにかく似合う!

日本で同じような騒動が起こる事はないとは言われているが、
「ゲームストップ株騒動」の原因となったのが、手数料無料で株の売買ができるるスマホアプリ「ロビンフッド」のようなサービスであったことから、投資のハードルが異様に低いサービスには、特に慎重になるべきとの教訓にもなった。

ロビンフッダーと言われる、若年層の投資家達のその後を案じてしまった。
(学生の間は地道にバイトで稼いで欲しいよ…)

時代の波に翻弄され、SNSであっという間にミーム化され、勝手に自分の意思とは関係なくネット上で祭り上げられるインフルエンサーの末路という意味でも、時代を象徴する作品に仕上がっていた。
にゃーめん

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