不乱苦

ダム・マネー ウォール街を狙え!の不乱苦のレビュー・感想・評価

5.0
ポール・ダノのナードすぎるビジュアルに食指が動かない向きもあろうが、なかなか見事な作品。
ポール・ダノが主役ではあるが、実質群像劇で、ダノの「影の薄い」感じがかえって良いバランスになっている。役者陣の好演にサムズ・アップ連発。ダノの弟役の方、本当にダメダメなんだが、とても愛らしく好きにならずにいられない。
そして重要なのは、これが事実を元にしていること、そして舞台が2020年末から2021年初めであること。主人公は姉を新型コロナで失っている。アメリカ・フェレイラ演じる看護師は、シングルマザーでありながらエッセンシャルワーカーとして日々奮闘している。市井の民は公共の場でマスクを強いられている。マスクを外して会話していると「マスクしろ」と言われる。方やビリオネアたちは遊び呆けているようにしか見えず、マスクをしているシーンもない。物語上の対立の比喩にもなっているのだろう。我々にとっての悪夢のような近過去を再現しながら、バーチャルに連帯していく姿に何度も胸が熱くなった。
ジョークも満載で何度も何度も笑わせてくれる。あと、市井の人々がなぜかケンドリック・ラマーを各地で同時に聴いてシンガロングしたり、唐突にミート・ローフがドラマティックに流れ出したり、ラストは妙に誇らしげにホワイト・ストライプスのSeven Nations Armyで締め括られたり、と謎のサントラセンスも楽しかった。
不乱苦

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