ロアー

ダム・マネー ウォール街を狙え!のロアーのレビュー・感想・評価

3.7
専門用語がたくさん出てくる金融業界の小難しい話かと思って身構えて観た。
でも実際は、不正で私腹を肥やす富裕層に小市民が一泡ふかせるという小気味良い話で、SNS時代の市民革命とでも言える話だったかも。
昔なら夜な夜な秘密裏に開いていたであろう会合は、現代ならLive配信やYouTubeで。銃や斧はスマホに持ち替え、指先のタップひとつが武器になる。革命や運動と言うとつい抗議活動や行進デモが頭に浮かぶけど、現代にはこういう革命もあるのかと目から鱗だった。

要するに金持ちの投資家は、ゲームストップ株も小口投資家も甘く見ていて足元をすくわれた訳だよね?
学生に母親に雇われ店員...貧しくも日々を懸命に生きている、ごくごく普通の市民である小口投資家たち。
誰かが日和れば途端にボロボロ崩壊してしまう砂上の楼閣に立ちながらも、実際には顔も合わせたことのない小口投資家たちが、強い団結力で踏ん張り続けたことにびっくりした。
劇中に出てきたミームの数々を見ているとナードの層が厚かったんだろうなって印象もあったし、でもやっぱりそれ以上に富裕層への強い反発心が彼らを結びつけていたことは間違いなかった筈。
投資家が弁護団から「金持ちアピール良くない」ってアドバイスされる描写があったからアレだけど(あそこ笑えた)、別に金持ちであることが悪いんじゃなく、あくまで空売りで不正に金を稼いでるのがいけなかった。まあ、何の不正もしてない金持ちが存在しているかは謎だからこの発言は無意味かも。それに"アメリカの株の話"というと他人事のようだけど、今の日本も投資家=政治家、株=税金と置き換えてみると、だいぶ危うい所にいるように思えてしまう。

専門用語を知らなくても大丈夫な映画ではあったけど、「空売り」だけはちゃんと説明されないまま話が進むので、事前に頭に入れておいた方が良いかも。ただ、途中のニュース映像に出てきた「空売り=株が下がれば下がるほど投資家が儲かる仕組み」という説明が全てでもあるので、実際の仕組みは分からなくてもここだけ抑えておけば大丈夫そう。

ところで、公開前のショットを見た時からセバスタが胡散臭すぎて「セバスタに一体何が...」って思ってたんだけど、映画を観たらあれはロビンフットになり損ねた男の顔だったんだと分かって納得だった。ひと目見ただけで様子がおかしいと思わせるところが、やっぱうまいよねセバスタ(誉めてる)。
"金持ちから盗み市民に分配する"=”ロビンフット”って、あのネーミングはホントぴったりだった。イギリスの義賊だけど、こういうのってアメリカも大好きなヒーローじゃん(偏見)。
なり損ねたとは言え、セバスタの立場は同情の余地ありだったと思うので、ちょっとおかわいそうだったな。

それとポール・ダノの弟役の謎のチンマス男(次々と美女を射止めやがってという意味でずっとこういう呼び方をしてやる)って、本当にこういうアメリカの典型的なダメ青年という役どころがぴったり。今あの人って実際にはいくつなんだ?なんかSNLでもあんな役ばっかりやってて、ずっとダメな若者という印象がある。

+++

「ダム・マネー」ってつまりこう言うお話だったよね?と言うのを、株で言うと難しく感じるから、ポケカで噛み砕いてみた(ネタバレ注意)。

どうせポケカなんて増販やら下火になるやら何やらで、すぐに価値が下がるだろうと見越した転売ヤーが、繋がりのあるポケカの持ち主からポケカを借りて客に売って、実際にポケカの価値がめちゃくちゃ落ちたところで同じ種類のポケカを安く買い戻して、それを元々の持ち主に返すことで差額分を儲けようとしていた(ここまでが空売り)。

ところが、とある男がポケカファンのプラットフォームで「ポケカには価値がある!俺は信じて買うぞ!」と声をあげたものだから、日頃から転売ヤーに怒りを燃やしていたポケカファンたち1人1人が触発されて「俺たち私たちもポケカを買うぞ〜!」と買いに買いまくり、ポケカの価値が逆にとんでもなく高くなってしまった。

ポケカのプラットフォームの存在すら知らなかった転売ヤーたちは、たくさん借りて売りに売りまくり、後は値下がりを待つだけだったポケカが、もはや到底買い戻せないほどの高値になってしまったところでようやくそのことに気づいた。

転売ヤーたちは焦ってポケカのプラットフォームを閉鎖したり、ポケカを販売しているサイトに圧力を掛けてこれ以上ポケカを買わせないようにしたけど、結局、ポケカファンの団結力と転売ヤーへの怒りが強過ぎてポケカの価値を下げることができず、ついにポケカを持ち主に返せなくなって破産した転売ヤーまで出た、つまりそう言う話だったんだよね?合ってるかな?
ロアー

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