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国葬の日のdendohのレビュー・感想・評価

国葬の日(2023年製作の映画)
4.2
安倍晋三の国葬が行われた2022/9/27の全国各地の様子を朝から晩まで淡々と流す映画。制作者が国葬反対寄りなのは間違いないが、必要以上に政治主張を作品にのせてこないので、賛成反対問わず、多くの人々にとって観てほしい。しかし淡々と映像を流すだけなので、単なる記録映画という印象は強く『ストーリー性がない』という感想があるのも分かる...。

ロケ地は札幌/東京/京都/広島/長崎のほか、安倍お膝元の下関、事件の起こった奈良、廃炉作業中の福島、基地問題に揺れる沖縄、更には当時水害が発生して国葬どころはなかった静岡の清水と絶妙なチョイス。

とりあえず驚くのは、インタビュイーの過半が国葬や政治に無関心であるという点だ。安倍晋三を元・首相ではなく元・大統領と勘違いしている人も居たりして、そういったインタビューが無編集で流されるのは逆に新鮮だ(ここまで政治に無関心で居られることには恐怖を覚えるが)。そして国葬賛成派についても安倍の功績を聞かれても答えられず、何故か『人柄』『長期政権』についてのみ褒め称えるのだが、これらも広い意味では政治に無関心層と言えるのではと思えた。

福島や沖縄、そして災害にあったばかりの清水については当然に批判的な声が目立つ。これはまあ既定路線なので新鮮味はない。辺野古の活動家の方が『国葬の賛否で民主主義を語るのではなく、基地問題でも民主主義を語れ』と仰っていたのは印象的。また清水の人々が『国葬の金を被災地に回せ』と言っていたが、仰るとおりだ。中には反対だけど『今さらデモをやっても無意味』という立場の方もいて、当時こういう人いたなぁと懐かしく思う。

なお当日の国葬会場周りの酷さは選挙ウォッチャー・ちだい氏の記事が詳しい(https://note.com/chidaism/n/n148c43a75952)
『今さらデモは無意味』という人に対しては、このカオスっぷりを生み出し、『酷い国葬だった』として人々の記憶と記録に残っただけでも、ギリギリまで行われたデモ活動には意味があったのだという事を繰り返し主張したい所。

(追記)
パンフレット読んで気づいたけど、最後に『国葬会場での一般献花者数』『デモ参加数者』『日本の人口』を表示したのは、本作の数少ない制作側の主張と言える部分だったのかもしれない。すなわち献花者もデモ参加者もそれぞれ2万人程度なのだが、日本の人口は1億2000万人いるということ。日本の大多数にとって国葬とは関係のなくて、興味すら湧かない存在だったということか。
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