金春ハリネズミ

遥かな時代の階段を 4K デジタルリマスター版の金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

4.0
さてさて濱マイクシリーズ2幕目です。

前回がモノクロフィルムだったのに対して(作中効果的に赤が入りますが)、今回はカラー。
結論から言うと、画面がひたすら良かった、なんなら本作の醍醐味は画面の美しさじゃないかしらと思うほどに。もってかれた。
とにかく画面の構図と色構成が徹底的で、それを最大限活かすためのアクロバティックな編集の緩急がとかく景気いい。
僕の視線を終始惹きつけました。素晴らしいです。

タイトルバックが入るまでの一連のシークエンスは、前作をなぞった「お馴染み」のテンションでどうしたってワクワクします。
ちょうど、芝居で云う口上みたいなもんで、ここだけ世界観が超越していますよ。

この時点ではもう満点はなまる大先生もお墨付きなわけですから、今後の展開にも少し心のゆとりができます。

とはいえ、内容はどうでしょうか。個人的には作劇の観点から、前作には及ばずといった印象です。
シナリオ云々よりももっと根本的なやつで取り返しがつきません。

戦後の復興期からずーっと、横浜のある川を守り続けた、生ける伝説爺が濱マイクに立ちはだかります。
触らぬ神に祟りなし。
戦後50年ひたすらタブー視されてきた開かずの扉を、若い奴らが突いてくるわけですね。
この展開は非常に面白いです。
クライマックス最後のシーンは圧巻です。ウルっときます。

これでよかったのにどーして。

本作のもう一つの鍵となる「家族」のテーマが、ひたすらこれを邪魔をしているようにしか思えない。
要らない。そんなテーマは。
そんなのは全部が浮ついてしまいます。

別に必要ない。ここまで詳らかに家族を語る意味が一体どこにあるってんだい。
たしかに一定の厚みある設定に多少のワクワクは抱きますが、とはいえそんなことをしてしまうと、とたんに牙城が崩れてしまう。
ノワールサスペンスというスクリプト上の本筋に対して、明らかな足手まといです。

うまい具合に親和性は保ててはいますが、終盤にかけてどんどんどんどん荒唐無稽化が加速する感じがして、全く乗れません。
これはどうしようもないのです。

観たかったものと、観せられたものとのギャップに、僕は困惑しているのだろうか。
すべては戯言、とでも、いうのだろうか。