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ポイズニング:食に潜む汚れた真実のhasisiのレビュー・感想・評価

3.7
米国では、毎年4800万人が食中毒で健康を害している。
食品が作られる現場の取材と、生産者や生物学者へのインタビュー。被害者の実情を伝えるショッキングな内容。
ライティングされて美しく棚に並べられた食材の裏側に迫る。

監督は、ステファニー・ソエクティッグ。
脚本は、ジェフ・ベネディクト。
2023年にNetflixで公開されたドキュメンタリー映画です。

【主な登場人物】🍔🥗
[ケネス・ケンドリック]内部告発者。
[サラ・ソーシャー]公益化学センター。
[サンドラ・エスキン]USDA食品安全担当。
[ジョン・コバヤシ]疫学者。
[ダリン・デトワイラー]教授。
[ティム・ヨーク]葉物野菜販売協定社。
[ティモシーD.リットン]法学教授。
[ビル・マーラー]食品安全弁護士。
[ブライアン・ロンホルム]食料政策。
[フランク・イアンナス]FDA食料政策。
[マイク・テイラー]検査サービス。
[マリオン・ネスレ]分子生物学者。
[ミンディ・ブラッシャーズ]元農務省。
[ランス・プライス]微生物学者。
[ロサ・デラウロ]下院議員。

[クリスティン・ホーニー・デア・ブライアン]
Netflixのドキュメンタリー『食品産業に潜む腐敗』の製作者。

【スタッフ紹介から、勉強へ】🥬📖🖊️
ソエクティッグ監督は、ニューヨーク出身の女性で、生年月日分からず。
ドキュメンタリー映画を製作するアトラスフィルムを経営している。
テレビを1本含めて、8本目のベテラン。
日本では本作以外だと『賢いお金の使い方』が観られる。

脚本のベネディクトは、1966年生まれの男性。
ノンフィクション本を16冊出している作家。
スポーツ、社会、政治と幅広く扱っています。
本作は同名の彼の著作にもとづいて書かれています。

ちなみに、日本の2022年の食中毒の発生件数は962件でした。
2023年はアフターコロナで、飲食店が活気を取り戻す影響で、被害件数は増加するでしょう。

[大腸菌]🫗🦠
大腸にいる菌。自分の大腸にいるかぎりは問題ない。尿道に行くと膀胱炎など、病気の原因になる。

劇中で扱っているのは、外から入ってくる病原性大腸菌。
日本でも、集団食中毒事件がたびたび報道されている「O(オー)157」が有名。

家畜や害獣の糞によって水や環境が汚染され、野菜や家畜に感染が広がってゆく。
日本の消毒された水道水と違い、外国では沸かさずに口にできないのは大腸菌によって汚染されている可能性があるため。

肉だと、表面と中身が混ぜこぜになっているひき肉の生焼け。
野菜だと、洗い残しがある、サラダなどの生ものを口にした場合に感染する。
ハンバーグとロメインレタスとトマトを挟んだハンバーガーを想像すると分かりやすい。

とくに、カット野菜やカットフルーツは、肉だとひき肉のようなもの。得体が知れず、かつ加工されているので痛みやすく、保存方法にも細心の注意が求められる。

[サルモネラ属菌]🥚🐀
内臓肉、鶏卵、鶏肉。とくに夏場の生卵を使った料理から感染することが多い。
調理する場合は、肉は最後に切る。
別の料理、とくに火を通さないものは別のまな板、包丁を使うなどの工夫が求められる。
2人以上で調理する場合は、肉切り担当を決めておくといい。

本作では、
企業のニワトリの孵化場から飼育場、加工工場などが紹介されている他に、
2008年のピーナッツバター食中毒事件について触れている。

【映画を振り返って】🍣🍉
米国の話なので、見ている最中つねに「日本はどうなんだろう?」とか「日本なら大丈夫」が頭に中に浮かんできて鬱陶しい。

米国の人だったら見た方がいいだろうけど、知識が増えたところで生活に余裕がないと対処できないだろう。
(清潔にするだけもいいか)

そもそも、米国で食事をすること自体が、つねにバクチのようなものだろうし。
物価の高騰で外食しにくい状況だと、自炊で火を通せる分、病気にかかる確立は減っているのかも。

わたしは、自炊だと野菜はすべて火を通して食べている。
肉を切ったまな板や包丁は洗剤だけでなく、熱湯消毒している。

話はそれるけど、それには理由があって。近くの大型スーパーで買った肉が必ず食あたりをするのが切っ掛けだった。ネットで調べてみたのだが、同じ意見を掲載している人はなし。
食中毒を起こさないよう、除菌のために強めの薬品を使っているのでは? と想像している。

その店では生肉や、肉が入った加工食品は買わないようにしている。
先日。それをすっかり失念していて、安売りで訪れた際に、数年ぶりに、まちがってコロッケを購入してしまい、案の定、食あたりに。
わたしはいたって健康体なので、ふだん体調を崩すことも少ないのだが、食べると症状が顕著に現れるので、被害妄想な気がしない。

もしわたしが映画を撮るのなら、そこのスーパーの肉の生産過程を取材すると面白いかもしれない。
(興味深い題材があるだけでもいいことだ)

本作の監督は、御用学者や経営者のインタビュー映像に、当人が見たら立腹するような演出をほどこしていて痛快。
監督のサディズムに震え、クスッと笑えて元気がもらえる。
映画を撮るのも命がけで、制作者には頭が下がる。

本作を見てからは、料理していても、とくに食材の痛みが気になるようになったし。周りにも気を配るようになった。
料理は音楽を聞いたり、おしゃべりしながら気軽にやるのがいいので、プラスなのかマイナスなのかは分からないが。

🦪キッチンに生ものを持ち込めば途端に危険地帯に。
食品会社を調査し、毒の入った食べ物が流通しないように予防する一方で、そもそも食品を扱うこと自体が危険をともなっていることを忘れないようにしたい。
野菜や肉などの生物に病気はつきもの。
自分の身はじぶんで守る。
夏場はとくに食べ物が傷みやすく、食中毒を起こしやすいので気をつけたい。

――ただ、刺身と果物はどうにもならないので、日本でも口にするものでバクチを打っているのは変わらない。
食への欲求はつねに健康と天秤なのだ。
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