Lisa

Fair Play/フェアプレーのLisaのレビュー・感想・評価

Fair Play/フェアプレー(2023年製作の映画)
3.8
昔似た業界で働いてました。
ほとんど男性ばかりで(むしろ上は男性しかいない)ハイリスクハイリターン、究極の結果主義が掲げられ、人材の流動性は高めでした。
二次会でエロいバーやキャバクラに行くのは当たり前だし、真夜中に急に若手が呼び出されることもしばしば。
そこで断ってしまうとノリが悪いだけでなくチームの一員ではない扱いをされるようになるので、「行きます!」と答えざるを得ない。
女性が昇進すると「美人だから」「枕営業」と影でささやかれ、彼女の能力に対する懐疑的な視線が常に上からも下からも向けられる。
見ていてフラッシュバックが何度かあり、映画自体のサスペンスとはまた違った理由で手に汗握る感覚でした。

この作品は、そのような環境下で存在する時代遅れかつ排他的なダイナミクスに焦点を当てています。
普段はstatus quoとして潜むこのダイナミクスが、諸々の出来事の連鎖によりあたかもパズルピースがぴったりはまっていくかのように組み合わさり、強化されてしまった場合に起こり得るシチュエーション。
そこで浮かび上がってくるのは、監督自身もインタビューで答えていた"fragile masculinity"(繊細なマスキュリニティ)。
プライドを傷つけられ自尊心を失った男性が感じる怒りとフラストレーションの矛先は、女性でありパートナーの主人公Emilyに向けられ、二人の関係を破壊していきます。
ネタばれしてしまうので具体的には書きませんが、その破壊に対して同等のバイオレンスで立ち向かうというエンディングにはそれなりのカタルシスと納得感がありました。

結論としては、クオリティは高くて業界リサーチも割とちゃんとされており、余裕で想像できるエクストリームな状況というリアリティとフィクションの絶妙なバランスを達成していて面白かったです。
役者の演技も見応えがあり、特にLuke役のAlden Ehrenreichの救いようのない感じが非常にリアルでした。
こういう役で登場しがちなCampbell役のEddie Marsanのほか、Mad Menでお馴染みのRich Sommer、Skins以降はNormal Peopleなど脇役中心のSebastian de Souzaも出演しています。

個人的に少し残念だったのはPhoebe Dynevor。Bridgerton以外で彼女を見るのが楽しみでしたが、アメリカン・アクセントはかなり伸びしろあり...。
変に誇張された話し方で違和感があり、気が散りました。
演技自体はとても良かったので、同じくアクセントは微妙だけど演技は一流のNicole Kidman的攻め方ができるのかな。
金融業界ではよくあることだし、役柄的にイギリス訛りのままで良かったんじゃないかとも思います。
いずれにせよ今後の活躍が楽しみです。
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