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ボブ・マーリー:ONE LOVEのMALPASOのレビュー・感想・評価

ボブ・マーリー:ONE LOVE(2024年製作の映画)
3.3
映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』

70年代後半、銃撃事件、名盤『エクソダス』の誕生が主に描かれる。
いくつかの本やドキュメンタリーですでに知っている事ばかりだった。それもあって、人間の描き方が薄く感じた。長い再現ドラマになっていたのはもったいない。
それでも、クライマックスのジャマイカでのワン・ラブ・コンサートのシーンは感動する。

ラスタフェリに救われ、ラスタファリによって人生を濃く短く生きた男は聖人君子ではない。女にだらしないし、ずっとガンジャでラリってる。そんな弱い心もボブの魅力かも。

ー映画を観ながら旅を思い出す。

20代前半、ジャマイカを旅した。モンティゴ・ベイに降りて、どこに行こうか決めかねていた。親切な初老のタクシー運転手が、「キングストンはゲットーだらけで危ないから、おれも行きたくない。ネグリルがいいんじゃないか」というので、ネグリルへ向かった。

ネグリルには、『007』シリーズのイアン・フレミングの別荘『ゴールデン・アイ』があり、そこでスティングが『見つめていたい』を誕生させた。

安宿の店主は、髭生えた大柄のおばさんだった。「何かあったら、弟に言え」と親切だった。
街でバイクを借りて、いろいろ周った。海がとにかく綺麗だった。
至る所にボブ・マーリーの絵や像があり、海沿いにある橋の下にはゲットーが広がっていた。

歩いていると、「ガンジャ」を勧められ、ラスタの兄ちゃんは海でガチガチの髪を洗っていた。船で海に出ないかと言った男は、何分間も潜って魚を突いた。ナオミ・キャンベルみたいな女が木の小屋から呼ぶ。へえー、これがジャマイカの生活かと見ていると、売春が目的だったので、入ったドアから逃げ出した。

ある夜、宿の弟が「サウンド・システム」と呼ばれるライブに誘ってくれた。昼間は空き地だった場所に、夕方、デカいスピーカーが積み上げられていた。会場内では、石鹸やタワシのような日常品を売っていて、地域の祭のようなものかと思っていた。
たしか、3、4組が歌った。知っていたのは、イエローマンと、なんとマルシア・グリフィス!マルシアはCDを持っていてよく聴いていた。キングストンに行くべきだったかなと少し後悔していたら、最後にマルシアが歌ったのは、「ノー・ウーマン、ノー・クライ」だった。涙が出た。食ったものとかも忘れたけど、このシーンは今でも憶えている。
ボブ・マーリーがいなかったら、当然旅をしていない場所。
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