セキ

あ、春のセキのレビュー・感想・評価

あ、春(1998年製作の映画)
4.3
めちゃくちゃ良い。面白い。
これが人情喜劇なんですね。
『東京物語』で壊れ始め、『家族ゲーム』で完全に更地になった日本の家族システムは、この作品で再生に向かって胎動する。
現代を悲観し過去を憂うような懐古主義に陥ることなく、ドライに前時代を恨みながら、また一から生活を始めようとする姿に心を打たれる。
90〜00年代は『逆噴射家族』や『Eureka』、『トウキョウソナタ』『ぐるりのこと』など、壊れ切った家族システムにおける救済と再生を求める日本映画が非常に多く、この作品もそのうちの一つだと思う。アメリカが時代ごとに戦争映画を作り自己反省を繰り返すように、日本はホームドラマを作ることで何か生きる価値のある未来を見出そうとしているのではないだろうか。

技術的な観点で見ると、カメラワークが非常に秀逸で、特に後半の病院屋上の長回し1カットは凄まじい。全体として春の光が非常に美しくフィルムで表現されていて良かった。
それまでの相米映画にあった独特な粗さが削れ、極めて繊細で綺麗な映画に仕上がっていた。
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