えべん

ほかげのえべんのネタバレレビュー・内容・結末

ほかげ(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

子役の瞳が強烈に印象に残る。

"戦後"とは名ばかりの地獄。人も家も生活も失い、戦勝という目標さえ失い生きるために生きている戦後。

復員兵が怯えた銃声、「闇の方は物騒だから」、怨恨と自害。加害者と被害者。「こんなもんで撃たれたら、痛いよなぁ」死にきれないテキ屋。死にきれない復員兵。死んでしまう、あるいは死んでしまったのかもしれない女。きっと生きたのかもしれない子供。復員兵や隔離された病人のように"怖い人"になるか、戦地で死ぬか。足し算もままならない年齢の子供が戦争を理解できるか?真っ当な倫理観なんてものがあるか?仕事の善し悪し、命、きっと頭で理解できていなくとも目の当たりにしたものが子供の夢を苛む。テキ屋にとっての"戦争"が復讐によって終わったらしい、彼を待つのは遠からぬ死だろう。ほかの人々の"戦争"はいつ終わるのか。無数に居る名のない人々の終わらない"戦争"。

女、テキ屋、孤児、復員兵、とにかく全員の演技が本当によかった。女と孤児は特に言葉が少なく、目と鼻と唇で見事に演じる。対照的に中年の目には覇気がない、これもよかった。

早起きしてしまった休日、咄嗟の思いつきで映画館へ向かったがあまりに濃く充実した95分間だった。ドトールにてパンフレットを片手に書き殴り。
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