磯野マグロ

ほかげの磯野マグロのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.7
【暗闇と兵隊】17
子供の頃はまだ、新宿の西口と東口を結ぶ地下通路に傷痍軍人らしき人が立ってハーモニカを吹いていた。この映画で薄暗くて得体の知れないびちょびちょの空間にうずくまっていた兵隊を見て、そんなことを思い出した。多分それほど予算のない映画だろうに、闇市の描写も真に迫っているように見えた。こちらは流石に未体験だが、ちゃんと人間の業と尊厳が描けているからだろうか。
戦争が終わったところで、帰還兵に怪獣(それも、もともとは戦争のために開発された原子力の影響で生まれた)とまた戦争させて、それを見て敗戦の憂さ晴らしとするような映画とは全く違う戦後がそこにはあった。
趣里のいた居酒屋が、「洲崎パラダイス」で轟夕起子がやっていた店を彷彿とさせる(店のサイズは全然小さいんだけど、表と裏のシームレスなつながりの感じや佇まいが)。
磯野マグロ

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