くらげ

ナポレオンのくらげのネタバレレビュー・内容・結末

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

首に引き続き歴史モノを。
世界史も同様に歴弱なので、ナポレオン絡みの知識は皇帝だったって事と、序曲1812年しか無く、また、それが劇中で使用される筈もなく。
こうなったらとことん前情報(?)を入れずに、と或るそういう男の物語、を観てやろうと映画館に駆け込みました。
冒頭でギロチンだったもんで、またしても首がポンポン飛ぶのかしら…と変な力が入っていたけれど、大砲の活躍が目覚ましいですね。
軍馬の定めとはいえ、辛かった…。

てか、英語なの?

遠征中に浮気されて飛んで帰ったのに、戻った途端に手綱を握られてしまうシーンは衝撃的。
怒りもあるんだけど、既に完全に心を明け渡しているナポレオンの哀しみと焦りがギンギンに伝わってきた。
ナポレオンの母への思慕を見抜いて、新しい保護者へと成り上がるジョゼフィーヌ。
それにしても浮気されるのも、お世継ぎが出来ないのも彼が床下手ゲフンゲフン。
ヴァネッサ・カービーさん、髪が伸びてからが本域で、低音ボイスと相俟って抜群に美しい。
そりゃ皇帝も骨抜きですよ。
彼を正しく送り出す意義を痛切に理解しているからこその抑え込んだ表情が堪らん。

髪型変えた奥さんにムニャムニャ言って興奮してるナポたん、超可愛い。
床下手というか雑だけど。
段々とリアルに老齢していくホアキン・フェニックスの演技も素晴らしい。
呆れるほどマイペースなんよね、彼。
居眠りしたり、座り方が悪かったり、食べ方が汚かったり、ミイラの口元に耳を澄ませたり、偉い人の前でも態度が変わらないのも不遜というより根が田舎っぽいままなのかも。
そこもまた多くの人に愛される理由?
そういう彼の内面性を面白みの無い表情のまま次々と繰り出す演技プラン、一体どうなっとるんや。

圧倒的なカリスマ性があった、が分かりやすく映像に現れるのはマルタ島から戻ってきて自分に銃口を向ける兵士を籠絡したシーン。
エンドロールに彼の戦績が表示されて、そこだけ見るとポンコツの天下人。
だけれど、それだけの人を動かしてきた証左でもあるんだな。
凡夫に見えた唯人が出世して、あっという間に、社会と奥さんの上昇気流に乗って、本人が望んだ以上の物事を動かしてしまう大胆な傑物に至る過程。
作り物語ならこんなに急速に世界を書き換える烈火の人は暗殺されちゃいそうなものだけれど、二度とも島流しなの、事実は小説よりアレナリねぇ。

「ご存知の通り」で年月が過ぎて行くので歴弱的には付いて行くのが大変。
彼の死去までを描く、が本筋だから仕方無いけれど、彼の功績功罪を一本の映画にするには割が合わない。
そりゃ輿入れの次のシーンで出産するよ。
4時間超えバージョンがあるらしいけど、それでも足りんのと違う?
キーパーソンとしてジョゼフィーヌの大きさに触れた訳だし、彼女の目線からナポレオンを語る、とかでもっと私人ナポレオンを深堀りして欲しかったかな。
一番はナポレオンの母との関係性をもっと知りたくなったけど、8時間バージョンになっちゃう。
直筆の手紙やら資料も多かっただろうし、憶測でキレイな物語を仕立てなかったんだろうな、というのは好感。
不勉強から「そういう資料が残ってたんだなぁ」って、俳優陣の演技に酔い痴れて終わってしまった感。

時代もあって抑えられた色調の背景なのに抜群に鮮やかなのはリドスコ監督の為せる技なのね。
曇天雨天ばっかりなのに、それこそ絵画のように美しい、イメージ通りのヨーロッパ。
男共がみんなふんぞり返って見えるのは襟周りがゴージャス過ぎるんだと思う。

ナポレオン時代の歴史に詳しい方、特にフランス人はどう観たのか、色々なレビューが楽しみ。
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