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ナポレオンのtakatoのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.0
 リドスコ御大の「俺はナポレオン時代の戦争と風俗を全力でやるんやぁ〜!。それ以外は尺的に無理やぁ〜(何故か関西弁)。」な意志がビンビンくる作品でした。まぁ、そうですよね。時代物として徹底的にやるにも、ナポレオンの実像を描くのも一本の映画で描くなんて無理ですよね。その周りでも面白いネタが溢れてるけど、それらは様々な関係書籍で補完してね?で正しい姿勢だと思います。


 本作はとにかく現代のリアリティーとスケールで描かれるナポレオン時代の戦争をたっぷり見れただけで甲斐がありました。第一次世界大戦以降は割りかし描かれてきましたが、まだ騎兵が大活躍していて歩兵が隊列を組んでしずしずと前進する近代戦になる前、かといって古代みたいに殆どファンタジーでもない時代の様相はやはり他とは違う。なによりボロジノの戦いでの騎兵が一気に疾駆していく様を見る喜びは、アクション=運動を捉えるという映画が持っている原初的ともいえる喜びがありました。


 正直それ以外は、ジョセフィーヌとの関係に絞っているのでかなりダイジェスト気味だと思います。ただ細部でちゃんとピンとくる瞬間があり、例えばナポレオンの地味に小物な感が出てるブリュメールのクーデター時の振る舞いとか、ジョセフィーヌの息子役の子が素晴らしいショタっ子すぎとか、黒人の将軍がいて「あ、これデュマのお父さんだ!」と思ったりで楽しめたし、世界観の作り込みもしっかりしていてグッドでした!。


 リドスコ御大の狙いがある程度読めてる人にとっては問題ないでしょうが、普通に正当で立派な歴史モノを期待してると肩透かしかもしれません。まぁ、ナポレオン程に巨大な存在を映画一本で手中にするのは無理なんで地味で労力がかかろうと本を読むしかないと思います。


個人的に関連書籍としては、ナポレオンの実像に迫るタイプだと藤本ひとみの「皇帝ナポレン」、腹心を描いた裏面ものだとシュテファン・ツヴァイクの「ジョセフ・フーシェ」、バックグラウンドとして大きく作用しているものとしては堀田善衛の「ゴヤ」がオススメです(敬称略)。
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