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ナポレオンのKuutaのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.9
皆さんなかなか手厳しい…!絵画みたいな映像がテンポ良く流れるリドスコ節に身を任せ、バリーリンドン好き世界史も好きなので2回見てしまった。4時間版も楽しみ。

・数字しか残せない虚しきバリーリンドン。バチバチに決まった画面でアホなことが進むコメディ。ありがちな男女の駆け引きだったはずが、いつの間にか巨大なシステムに飲み込まれて止まれなくなる=やっぱり悪の法則。

ナポレオンは何が欲しかったのか?素朴な感性が周囲の状況によって類型化、肥大化する、ジョーカーにも似た展開。システムに取り込まれたと気付けない男、システムに対抗しようとし、屈する女。離婚シーンはそのすれ違いがマックスに。

市民の支持の上に立つ皇帝としてナポレオンは自ら冠を被るが(フランス王は聖職者から戴冠される)、見た目が締まらないので、ナポレオンがジョゼフィーヌに戴冠する場面が、絵画になった。この歴史的事実と「ジョゼフィーヌありきのナポレオン」という今作の視点は重なるように思える。

・みんなが思い思いに野菜を投げる冒頭の処刑から良かった。「最後の決闘裁判」と地続きの気まぐれな大衆。その中に混ざって複雑な表情のナポレオンに、リドスコは何の特権性も与えていない。

・夫婦も戦争も、力関係の変化をアクションで示す。ワンシーンの中で何度も流れが変わるものの、ラストシーンのやりとりが示すように、細かなゴタゴタは歴史に記録されない。ブリュメール18日のクーデタ(蘇る受験の記憶)が失敗しかけ、憲法違反だと強弁するもタコ殴り→階段をローリングしながら退場→安い芝居で憲兵を説得して再突入が個人的ベストシーン

・全部描くのは無理に決まっているとはいえ、ダイジェスト感は拭えず。ナポレオンの人生が面白いので退屈はしないものの、映画というよりは映像集に近い印象でした。
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