今月配信終了とのことで久々に。
記憶が無かったのでほぼまっさらな状態で見られたのが非常に良かった。
鑑賞前に抱いていた"イーストウッド作品の中では比較的凡庸そう"であるとか、"理想主義的なものを声高に叫ぶ感動作"みたいな印象を尽く覆してくれた傑作だった。
これはネルソン・マンデラという人物を深く掘り下げる"伝記映画"でもなく、ラグビーのハラハラドキドキの熱い試合を見せる直進的な"スポーツ映画"でもない。
本作でのモーガン・フリーマン演じるマンデラのなりきりぶりは凄まじいものがあるが、同じく彼が"獄中生活をしていた映画(※勿論設定)"といって思い浮かぶはやはりフリーマンの代表作『ショーシャンクの空に』。
そんな『ショーシャンクの空に』での劇中セリフで、"希望はいいものだ。素晴らしいものは決して滅びない"であるとか、"身体的な自由は奪われても、心の中にある希望(詩)は誰にも奪えない"といったものがあったが、奇しくも本作『インビクタス』に通底するテーマでもある。
ニヒリズムに陥らない不屈の魂や、希望(※詩、ダンス、祈り、人への感謝の気持ち、日々のちょっとした行い)の積み重ねこそが、やがて大きなうねりとなり、奇跡を巻き起こすといったその"波及"を見せる映画であり、それを大仰にではなく恐ろしいほど簡潔に軽妙にあっさりしすぎな程に描き切るイーストウッド、及び盟友トム・スターンのカメラワークに脱帽。