微少女

市子の微少女のネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

杉咲花の好演に心を動かされた。
ただ、それ以上に、映像表現や音響効果、ストーリーラインに、強く光るものがあった。

【演技】
■主人公の脆さと儚さと
人間って儚ければ儚いほど追ってしまう。追いたくなるような儚さが強く現れていた。何を参考にしたらあんなにリアルにできるんだと驚きがあった。

【映像表現・演出】
■「揺れる」表現
撮影段階からの設計だろうか、画面が終始揺れていたのが、上記の儚さに加えて、芝居全体の不安定さを演出していて目を見張るものがあった。
テレビドラマにおいてFIX撮りが流行っているなか、印象的な表現だった。

■映像の拡張としての音響効果
音響効果が抜群によかった。画面に映っていない部分を音で見せていて、スクリーンの広がりを感じた。
特に、アパート内のシーンなどは、映像の揺れも合わせて、自分がそこに存在するような錯覚を受けた。

■観客の想像力で組み立てる点と線
特にラスト、和歌山の白浜で男女2人が遺体として発見されるシーン。わざわざ誰が死んだかを言わないのが極めて演劇的でよかった。「あれじゃわからんよ」と言い出す観客もいることが推察されるが、それよりも表現を優先したことがあのシーンに象徴されていた。
また、前半は「点」のシーンが多く展開されていったが、後半になるにつれてきちんと「線」としての表現に結びついてゆく流れは見ていて気持ちよかった。そして、その「線」も決して制作者が強く押し出しているわけではなく、あくまでも観客の頭の中で繋がるように仕向けられていた演出だったと感じた。

【追伸】
「にじ」がテーマソングとして鼻歌で歌われていたのがとても好きだった。きっと明日はいい天気になるよねって。


追伸
あれからPrimeで公開されて何度も見てしまう。不思議な魅力!
微少女

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