もん

市子のもんのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.2
映画館で観ておけば良かったと思わされる良い映画だった。
彼女の犯した罪が許されるわけではないが、何が正解だったのかはわからない。
ずっと違う人の人生を生き、自分が自分であることを否定する毎日。生活は荒れ、家に帰れば妹の介護。抜け出したいという意志すら失われた虚無の毎日だったんじゃないだろうか。
でも、もし自分として生きられる道が(意図せずとも)見えてきたなら、それを求めるのは当たり前じゃないだろうか。
彼女の人生はそこから始まり、そして前は想像もできなかった70点の幸せを噛み締めて生きていたんじゃないだろうか。
最後に垣間見える二人の何気ない幸せな日々が何よりも愛おしく思えた。
本人ではなく周りの目から少しずつ明らかになる真実。終始不穏なのに、そこにあるのは恐怖ではなく、夏が生み出すジリジリとした不快感。
彼女にまたあの70点の幸せが訪れますように。帰りたいと思える家に帰り、朝起きたとき見る寝顔に安心する人に出会えたなら幸い。
もん

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