如月カルラ

市子の如月カルラのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
割と好きな感じのストーリーだった。
「ある男」を思い出すような運びもありつつ、胸に来る映画。

主人公の男性は市子という女性と暮らしていて、ある日結婚を申し込む。
泣いて喜ぶ市子だったが、その次の日に市子は行方不明に。
市子を探す主人公、刑事、市子の過去を紐解きながら追いかけたその正体と行く先は?

普通であることや幸せへの憧憬や恐れが詰まったような、苦しい映画だった。
幸せが目の前に提示された時に恐怖を感じてしまう気持ち、過去の経験から自分を縛ってしまう気持ち、わかる。
夜の海で車のライトから完全に目元を隠す市子のポーズが、揺らぐ曖昧な存在というか、いないものを表しているような気がした。
市子自身も自分という存在、在り方が判らなくなってしまっているのかもしれない。

記憶の中の母親の鼻歌を口ずさみながら夏の日を歩く市子の先には、何があるんだろう。そこに憧れたものがあってほしいと思った。
如月カルラ

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