830hz

市子の830hzのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

アンメット観てから若葉竜也のお芝居を観たくて鑑賞。
若葉さんのお芝居観たくて観たのに、完全に花ちゃんに持ってかれた。
杉咲花ってこんなリアリティあるお芝居できる女優さんだったのね。なんて眼を、表情をするんだって思ったよ。
花晴れで止まっててごめんね、、、こんな良い演技する俳優さん日本にもいたんだね、、、
すごく難しい役だろうに、要所要所で静かで自然なのにものすごく説得力のある演技だった。上手すぎてちょっと浮いてる場面とかあった。
市子の心からの叫びと乾いた笑い、一見笑ってるようにも見える絶望の涙、プロポーズの涙が、頭にこびり付いて離れない。

もちろんアンメットでのお芝居ももちろん良いんだけど、市子への没入感は桁違い。
市子の人生が壮絶すぎて、でもそれを表現出来てしまう花ちゃんが本当にすごい。
思ってた以上に激重の映画だったけど、良い映画だったな。The本格派な邦画って感じ。良い作品に出会えて良かった。
もう一回観返したいな。きっと初見と随分印象が変わるんだろうな。

これで晴れて花ちゃんのファンになりました。

2024.05.23 2回目
一日中この映画が頭から離れなくてもう1回観た。わたしにとって大切にしたい作品に出会えたのだと思う。この作品に出会わせてくれた主演2人に感謝したい、、、ありがとう。

最初と最後の鼻歌のシーンの色鮮やかな夏に対して、他の場面は基本ずうっとセピア調寄りの色褪せた色調。
市子の狂気と純粋さ、危うさと魅力、その辺りのアンバランスさを象徴してるみたいだった。市子にとっても長谷川くんとの日々は幸せなものだったっていうのが何とも胸に来るものがある。もう戻れない幸せな日々を思った涙も混じっていたのかな。

市子の境遇があまりにも壮絶だからあまり目が向かないけど、長谷川くんもなかなかキツい半生を送ってそうだと思った。長谷川くんがどんな人生を送ってきたかもちょっと知りたい。

2024.05.24 3回目
お味噌汁は市子にとって家族団欒の幸せだった時代の象徴だったのね。

映画の最初と最後、とても印象的な市子の鼻歌は時系列的には月子のシーンで母が歌うのが初出に当たる。
あの鼻歌はにじという歌のメロディで、ラストシーンに出てくる短い虹には「新しい始まり」という意味があるらしい。
彼女にとってあの鼻歌は無意識ながらも亡くなった2人と、市子自身への鎮魂歌である種祈りのようなものなのかなと思った。
あと市子、長谷川くんに対しては殆ど嘘はついていなさそう。本当は自分を偽らず生きていたいと切実に願っていて、それを許してれる長谷川くんやキキちゃんのそばは安心できて彼らのことはきちんと大切に思っていたんだろうな。
そんな大切な彼からのプロポーズは嬉しさと、それに応えられないことや自分の境遇への悲しみややるせなさ、これまで二人で過ごしてきた幸せな日々への想い、他にも色んな感情が混じっているだろうけど、ようやく涙に込められた気持ちに少しだけ近づけた気がする。

あと市子の事件以降の黒服は喪服というか、本人の深層心理にあるこれまでの業のようなものだと思ってるんだけど、長谷川くんといる時だけは柄物だったりたまに黒以外も着てるところを見ると、長谷川くんの前だけでは純粋に市子として過ごすことが出来ていたのかなと思って切なくなった。

わたしはきっと「もう戻れない幸せな日々」を描いた映画が刺さるんだろうなと感じました。
830hz

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