このレビューはネタバレを含みます
市子の母なつみの「ありがとう」に全てが象徴されていたように思う。
長谷川からプロポーズを受けた翌日に失踪した市子。彼女を探す中で見えてくる過去は壮絶なものとしか言い表せない。
確かに前年公開映画「ある男」と始まりが似ていた。またテーマは「誰も知らない」と共通する部分があった。しかしこの作品と違うのはより暴力的に、そして残虐さを全面に出してきていること。つまり市子やその周り自身がその残虐性を認め、悪いことだとわかっている中で行われているのだ。
私は残虐な事件でも何にしてももう少し淡々と進む方がより怖く、考えさせられて好きなので3.7としたが、これは好みによると思う。
悪徳性を自覚していることは危険度はまだマシだ。しかし本人の心持ちや追い込まれ方はとても酷くなってくる。
つまり、この映画の中で中心となっているのは市子の心情だと私は感じた。実際に存在する問題のなかでも焦点の当て方が様々あるのだとわかった。
そこで市子役が杉咲花であったことがこの映画の強みだろう。彼女の絶望、諦めといった感情の表現に惹きつけられた。
ふと見始めたにしては重かったが、見たことを後悔させない作品だった。出会えてよかった。