ホリ

彼方のうたのホリのレビュー・感想・評価

彼方のうた(2023年製作の映画)
3.9
『何か、味が違う』
『これは春さんのオムレツ。
私のとは違う。それぞれの味が
あるんだよ』

杉田監督の作品って不思議。
登場人物たちの
後ろ姿を切り取ることや、
顔がよく見えない
引き映像が多いんだけど、
目が離せないリアリティーが
詰まっている。

トークセッションも聞いて、
『なるほど』って思ったのが、
この作品は"豊かな音に
溢れている”。

登場人物2人が麺をすするシーンも、
台詞が発せられないため、
沈黙の時間が長い。
しかし、整音作業で、
厨房から皿を洗っている音を
付け足したらしい。

映像面は決して
派手な演出はないし、
台詞数も多くはないが、
だからこそ、
台詞の1ワードや環境音が
繊細に感じ取れる
作りになっているんだなと。

その豊かさは
登場人物の関係性にも
反映されている。

他者を助ける
アクションを通して、
自分の感受性も豊かになり、
弱さを打ち明けることに繋がったり。

また、主人公が通う
芸術のワークショップという環境。
他者と一緒に
何かを作り上げることで、
狭かった行動範囲が、
どんどん拡張される構成に。

日常に溢れる
音の豊かさ…

他者と触れ合うことによる
感受性の豊かさ…

それらを
強く感じさせてくれる作品でした。

自分が撮ったら、
絶対こうならないし、
その違いをはっきり見せてくれる
映画の多様性…
やっぱり、面白いですね。
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