Mariko

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのMarikoのレビュー・感想・評価

4.5
ポスターの雰囲気とタイトルから想像される内容の斜め上を行く作品だった。
クリスマス休暇にたまたま居残り合わせた3人がふんわりと少しずつ絆を深めていく、みたいなのを想像していたのだけど、心を通わせることに違いはないのだけど、この1970年という時代背景を色濃く見せながら、この「名門寄宿学校」の教師、生徒、給食担当の3人のバックグラウンドとその関係性が鋭く抉られながら描かれている。

この3人。先生役のポール・ジアマッティ、給食係でアカデミー助演女優賞を獲ったダヴァイン・ジョイ・ランドルフがお見事なのはもちろんなのだけど、とりわけ生徒アンガス役に目を奪われた。演じるドミニク・セッサ、今作が映画デビュー、なんとこの舞台となった寄宿学校の生徒を対象にしたオーディションで選ばれた当時高校3年生と知って驚愕。ただ、逆にあの「まるで当の本人であるかのような」リアリティはそれでこそなんだな、と納得もする。「少年」を卒業する年齢でありつつ大人ではない、不安定さを湛えた目。後半で明かされるとある設定がそれ故絶大な説得力を帯びてくる。

ひとつひとつのエピソードがボディブロウのように効いてきて、終盤はかなりうるうるしながら観てた。
音楽の使い方も近年観た映画の中でも群を抜いて素晴らしい。
70年代のアメリカンニューシネマのような風合いの新作に2024年に出会えることの幸せよ。
Mariko

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