たかちゃん

青春ジャック止められるか、俺たちを2のたかちゃんのレビュー・感想・評価

4.1
仕事柄、70年、80年代は出張で名古屋によく行き、夕方から映画館にも立ち寄った。だが、シネラマ名古屋、中日シネラマというビッグキャパシティの大型劇場も、名宝スカラ座も今はない。名古屋東映、東映パラスにもよく入った。駅前シネマというロードショウ館はオープンしてもすぐに閉館した。今池のシネマテークでは東京で見逃した作品を見ることができたが、やはり今はない。今池にあった東宝封切館もなくなった。名古屋の劇場経営は難しいのだろうか。それでもアート系の小屋は、伏見ミリオン座、大須シネマが頑張っている。そこにシネマスコーレが参入するのは過当競争ではないか、と危惧したが、割と自由度のあるプログラムで、独自性を出しているようだ。シネマスコーレには1回だけ入った。その時は香港映画を見たので、邦・洋混合のようだ。なぜか会員になり、会員証をもらったのは、また行こうと思ったからだろうか。キャパ50だから、ラピュタ阿佐ヶ谷の規模だ
本作は、シネマスコーレ開館の話を軸に、井上の成長物語になっている。それを井上自身が監督し、脚本も書いている。井上が河合塾の映画を第1作として撮るシーンは、若松にカットが早すぎると叱られ、次は遅いと罵倒され、監督なのに「俺の視界から消えろ」とまで罵られる。これでは監督不在で、アラン・スミシー名義だろう。自虐ネタのようなシーンを、若松の愛情表現とわかる描き方ができたのは、やはり自己体験だからか。スコーレの屋上から見下ろす金本(芋生)と、路上の井上という位置、そして屋上での「殺したいのはあんたのような奴だよ」と金本が叫ぶのも、実は好きの裏返しの告白だろうか。そのあとも、屋上は潜在的感情の発露の場となり、感動的シーンをみせてくれる。
井上淳一は、映画雑誌の星取表でも、こんな映画は許せないと思った作品をきちんと的確に批判していたので、映画のわかる監督と信頼していた。その信頼に応えた力作である。
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