ヒデロー

悪は存在しないのヒデローのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5
【高橋と黛の会話シーンが個人的ハイライト】

面白かった。
高尚な映画体験ができた。
「お〜ここで終わるか」と思ったし、クレジットも一瞬だった。
あの一見、無責任に思えるような終わり方も潔くて良い。

帰りの車中で色々考えた。
自分なりに納得のいく答えは出た。
以下、個人的考察。

妻は狩猟関係で殺された。
鹿を撃つはずが誤って撃たれたか。
黛が家族の写真を見た時、銃声が鳴ったのはその暗示。

娘は銃で撃たれた鹿を助けようとして、鹿に攻撃された。
だから鹿を撃つ者(自然環境を壊す者)に対して腹が立って、高橋(同じく都会から来てグランピング計画を進める者)に暴行を加えた。

蕎麦屋の帰りの車中のシーン。
巧は「行き場の無くなった鹿はどうする?」の問いかけの後、タバコに火を点ける。
それに対して高橋は、巧の問いかけに答えず、反射的に窓を開けた。
これは、厄介なものを強制的に排除したいという比喩に思えた。

娘は生きている。
冒頭の森を見上げたシーンとラストが重なる。
これは娘の視点である。
冒頭は父の背中におぶられ、見上げる視点。
ラストは父に仰向けで抱えられ天を見る視点。
つまり、意識はあるということ。

以上である。
見当違いだったら、すまない。笑

都会側の人間も丁寧に描写していたのは、敵側の気持ちも観ている人に感じさせ、100%悪という風に見せない演出だろう。

前半の役者の演技は明らかな棒読み演技だった。これは無名の役者だから下手なのではもちろんなく、意図的なものだと感じた。おそらく、感情を込めないことで村で暮らす人々にとっては一連の出来事が日常的なものであることを強調したかったからではないか。
その証拠に後半は台詞に気持ちが入っていた。

う〜ん、映画を作るのってこんなに大変なんだと再認識したGWであった。