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悪は存在しないのokaeriのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

わたしの映画に対する評価として、映像作品として存在価値のある作品はすべて「いい作品」と思う、それはどれも素晴らしく、一言で言うならばただ感謝したくなる。

本作もまさにそうで、それを前提とした上で、最悪だった。(他の作品を挙げるのもどうかと思うが、坂本裕二の『怪物』も似たようなことを思った。)
どうしてほぼ満席で、隣のカップルのひとりは泣いていたのだろう。

不快だった。タイトルよ、なんだそれ。答えのない終わり方を仕方ない みたいにする責任転嫁みたいだ。狡い。

別に誰が死んでもいい世界の話だったが、締められた男がパンサー尾形にしか見えなくて、彼が全部のバツの悪さを背負っていた。

区長が花ちゃんに「あんまり原っぱに行くな」と言っていたことも、銃声も、鹿の攻撃性の話も全部終わり方への伏線で、それが見えた瞬間にうんざりした。タイトルの「悪」がこの瞬間に存在してしまった。それをタイトルで否定するだなんて、と思った。それがただただ不快だった。


山の麓の観光地に住んでいて、4月から行政職として働き始めたところだ、自然とビジネスの対立構造の物語自体に、当然にバツの悪さを感じる。
説明会で老婦が話した「都会の人(特に若者)は田舎にストレスを “投げ捨てにくる”」
痛い言葉だ。おっしゃる通りです。

それから、巧の話す「他所者が入ってきて発展した、大切なのはバランス」。
この人の話すこと全てが正しいと思われて「アドバイザー」を任せること
確かに彼は正しいけど、あまりに淡々としすぎていて、感情のなさが正しさのように見えて怖くなった。誰も正しくなどなかった。


音楽がプツッと途切れる芸術に、よく心奪われる、「静寂」のすべてをよくわかるからだ。
本作もそれが巧みだった。

あと、どうでもいいことだが、はじめに花を迎えにいくシーン、外カメラだと思っていた画面が、車のバックカメラだったの、なんだそれ、初めてみた。
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