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悪は存在しないの1のネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

他者が感情と思考を持って生きているということを、自分は理解しているのかと問うことが生活の中で多い。映画を観ている間、そのような思考が持続していたから、現実と非現実を隔てる壁が段々と薄れていく感覚があった。

自然の美しさを徹底的に映し、観客側に美しさを共有する。その後、美しい自然を消してしまうかもしれない存在が現れ、あからさまに人間を善悪に区別する。
悪側の人間の事情を描く。ブラックな会社、最悪な上司、人間臭い恋愛事情、薪を割る、一緒にご飯を食べる、煙草を一緒に吸う(ここのシーンは本当にすごい。分かり合えるんじゃないかと期待してしまった。しかしポイ捨て)、善悪というものはそもそもないように思わせる。そして、最後。

まず1番に思うのは、人間は善悪二元論で語れる存在ではないことを示していく脚本がすごい。観客側も視点がどんどん変わっていくのが面白かった。濱口竜介に翻弄されたと思った。どこか自分も人間をそのように判断していないか、と問いかけてきた。
映画だけではなく、それは現実世界にもいえる。端的に人を表す言葉を言ってしまうことに私がどこか抵抗があるのはそのようなことなのではないかと気づかされた。

誰かの視線のショットが多かった。車、死んだ動物、自然など。脚本が強いけどショットも強すぎる。自然の美しさを徹底的に映そうという意思がある。関係ないのかもしれないが、花の顔が子どもに見えなかった。大人に見える。車内での会話のライティングの演出。
自然は時に人を癒してくれるが、時に脅威ともなる。そのような面でも、善悪二元論を問うようなものだった。だから『悪は存在しない』なのかなと思った。
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