ゆきゆき

悪は存在しないのゆきゆきのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

まずオープニングの映像、森の中から木々を見上げる主観ショットと石橋英子が手掛ける音楽に引き込まれる。穏やかさと不穏さが同居したこの冒頭部分が、この作品の全てを表しているかのよう。

主人公の日常を描いた長回しや、芸能事務所社員らの車内での会話劇を通して、登場人物それぞれのキャラクターや背景が見えてくる演出はさすが。ただし全員がどこか現実感の無いような、これが劇であると意識させる感触は監督の持ち味か。それが主人公の得体の知れなさにも繋がっているので、あの解釈が分かれる最後の行動も唐突ではあるが、不条理というまでの感想は持っていない。思い返すとあのラストに至るのが最初から決まっていたような、不思議な後味がある。

個人的にはラストの主人公の行動は娘に対する悪意の発露だったのではないか、と思ったり。迎えの時間を毎度都合よく忘れたり、このご時世に幼い少女が1人で帰宅するのを咎める様子がなかったりと親としてはちょっと不自然。事故に合うのを無意識に期待してたんじゃないですかね。あくまでひとつの解釈。監督は何か大事なピースをあえて落として編集した、そんな感じも受けました。
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