外は雨

悪は存在しないの外は雨のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.4
これは、素晴らしかった。重く垂れこめた雲を彼方に木々の枝葉を見上げたまんま低くずっと移動する視線。透明だけれど軋むような音楽は共鳴したり時にはブツっと途切れたり。これは鹿の視線。美しい始まりのこの映画に震え茫然とする。

この映画困惑してしまうところが随所にあって。奇妙に時間の止まった子供たちのだるまさんが転んだ。物忘れの多い父親。娘を追いかける父が見えない「その場所」でおそらく娘に追いつき彼女をおんぶする。なぜか進行方向とは逆の後ろから見る車窓風景。そういう奇妙な寓意のような部分とやけに現実感のある住民説明会と東京が共存している。

太陽の沈む森に帰るはずだった鹿。倒れた少女の鼻血は鹿の弾痕のようだった。
外は雨

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