映画大好きそーやさん

悪は存在しないの映画大好きそーやさんのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督が贈る、そこにある「大自然」の美しさと恐怖。
これは素晴らしい作品でした!
都市vs田舎かと思いきや、人vs自然に至るというツイスト、本作の制作の発端となった石橋英子さんの楽曲、人間性を映し出す、件の車内での会話劇、物議を醸した無限の解釈が広がるラストシークエンスと、褒め出せばキリのない作品で、まさに「映画」を観ているという気分に存分に浸りながら観ることができました。
奇妙な撮影や編集がなされている部分も多々あり、実験的な側面も強かったですが、それを含めても本作は今年を代表する1本と言っていいのではないでしょうか!
ラストシークエンスの解釈としては、一般の方からレビュワーの方の意見まで、様々読んだり聞いたりしましたが、個人的には花(西川玲)が手負いの鹿に殺され、こんな悲劇が起こってしまったのは花をすぐに迎えに行かせなくした高橋(小坂竜士)のせいだとして、巧(大美賀均)は高橋を絞め殺すという選択をしたのかなと考えました。
正解は監督しか知り得ませんし、そもそも正解というものがあるのかも不明です。
そんな中でオープンクエスチョンとして投げ付けられたラストをどう解釈するかで、作品の価値も大きく変わってくるかと思います。
私は上記のように考えましたが、本作を観た方でまだラストの解釈が固められていない方がいましたら、ぜひ考えてみることをオススメします。
仮に一つに定めてみた際に、今後再鑑賞すればまた違った解釈を抱くかもしれませんし、一度考えた解釈がより強固になるかもしれません。
そういった楽しみ方ができるのも、本作の強みだと思います。
ただ、尺の使い方であったり、演技であったりに関しては少々飲み込めない部分もあったため、抑え目な評価に落ち着きました。
総じて、多少は疑問に思う部分はあれど、概ねの映画構成要素で満足させてもらえた意欲作でした!