歩く肉

悪は存在しないの歩く肉のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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主に個人間においての、人間と人間の分かり合えなさについて描いてきた濱口竜介だけれど、今回は地元民vs企業乃至自然vs人間のディスコミュニケーションを描き、もっとスケールが大きく、主語がでかくなっていて、この監督は確実に成長しているなと感心する一方で、好きか嫌いかというと、イマイチ好きになれないというのが正直なところ。登場人物の演技や感情、諸々含めて、全て計算され尽くしていて、そこが自分と相容れないものがあるというか、息しづらさがある。
自然である感情を制御し、それを意図的に人工的なものに転換し、ロジカルに論ずる。いっそハネケのように、感情を完全に削ぎ落とし、徹底的に観察眼を介して描いているならむしろ好きになれたかも知れない。しかし、濱口の場合は、描く対象との付かず離れずな距離感があって、表現の仕方に人工的なものと自然なものが綯い交ぜになって、取捨選択があり、それが個人的に鼻について、好きになれない。
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