ganai

人間の境界のganaiのネタバレレビュー・内容・結末

人間の境界(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ベラルーシが対立する隣国ポーランドの国境に「人間兵器」としてシリアやアフガニスタンの難民を送り込むという嫌がらせとしか言い様のない施策を元にしたドラマをモノクロ映像で描いた作品。

映画は二国間の国境線を行ったり来たりを繰り返させられる難民家族、彼らをベラルーシに送り返すポーランドの国境警備隊、難民を支援するアクティビスト、正義感からそれに手を貸す一般民の女性、と幾つかの視点からこの問題を描く。

難民の中にも食うに困って空き巣に入る者がいたり、国境警備隊や警官にも嫌々命令に従う者がいたり、政府に疑問を持ってデモには参加するけど難民を直接支援して火の粉が振りかかるのは避ける人など本当に様々立場の人が登場し、難民問題が一筋縄ではいかない事を描き出す。

映画は登場人物達に安易な結論めいた終わりを示さないが、ウクライナからの難民を積極的に受け入れるポーランドの人々の姿をエピローグとして映す事で、イスラムフォビアに起因する人種差別こそが根深い問題だろうと提示して終わる。

同様の難民を送り込む施策は対立政党を基盤とするアメリカの州の間でも行われているし、日本の入管行政は国際人権基準を満たしていないと国連からたびたび勧告を受けている。この映画を局所的にどこか遠い国で起こっている他人事ではなく自分ごととして捉えなくてはいけないと思う。
ganai

ganai