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ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版のganaiのレビュー・感想・評価

4.5
この作品を初めて観たのは多分10歳前後の頃、TVの洋画劇場枠で途中までだったと思う。

チャールトン・ヘストンと爺さんがガメた肉を美味そうに食べてるのが印象的でしたが、子供の頃にこんなディストピア映画を観てしまったせいでヒネた大人になってしまいました(笑)

内容がセンセーショナルだからか、あまりTV放映される機会が無かったようだけど、有名なのでオチだけは映画評か何かで読んで知っていて、いつか全編を観てみたいと思ってもいた作品です。

公開当時では半世紀先の未来だった2022年、温暖化と人口増加で食糧難と貧富の差が大きく開いたNYを舞台に殺人事件を追う刑事が、完全栄養食品のキャッチコピーで売り出し中(配給制だけど)のソイレントグリーンに絡む陰謀に巻き込まれていくという話。核戦争による荒廃ではないところが当時では画期的。

行き場を失った人達がそこいら中に寝転がっていたり、屋外の空気は暗緑色に澱んでいたり、幸い現実の21世紀初頭の先進国都市はここまで酷くなっていないけれど、国によっては一歩手前と言っても言い過ぎではないのが恐ろしい。

その他の演出面ではチャールトン・ヘストン演じる主人公が被害者の物や愛人(高級賃貸住居備え付けの人間家具という設定)をガメたり女性を殴ったりと倫理的には感情移入が難しいのだけど、一方で一緒に暮らしてるアーカイブ人間(劇中の呼称は「ブック」)みたいなノスタル爺さんに「愛してる」と言い合ったりと今日的な視点では別の意味に取れそうな描写もあるのは興味深い。

97分という今では短めの上映時間を感じさせない濃厚な作品でした。
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