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人間の境界のharuのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
4.0
唯一の希望、ヨーロッパ。

祖国から逃れたシリア人一家は、平和な生活を求めヨーロッパを目指す。そこでベラルーシ経由でポーランドへ亡命するという「安全」なルートを取ったところ、ポーランド国境には武装した国境警備隊が。そのままベラルーシに送り返された彼らは、今度はベラルーシ側から再びポーランドへ強制送還されてしまう。

ヨーロッパ難民危機についての話。
日本だとあまり実感がないですが、ヨーロッパでは2015年頃から中東やアフリカからの難民が急増し、それに伴い治安が悪化。ポーランドではベラルーシ経由で越境してくる人たちが問題となっていて、国境付近の警戒を強化しています。それは単なる人数の問題ではなく、この中にロシアの戦闘員が紛れている可能性があり、彼らを国内に入れてしまえば大変なことになるからです。
さて本作では一連の出来事が難民の視点で語られたあと、警備隊の視点で語られます。リアルすぎてドキュメンタリーのようで、思わず目を背けたくなるシーンもありました。警備隊の中には単に難民を追い出すだけではなく、彼らに暴力を加え、金や食料を奪う等の非人道的な措置をする者もいる。それはそもそもイスラム教徒に対する差別があり、どこかで彼らを人間扱いしなくても良いと思っている人がいるからかも知れない。少なくとも彼らに対する行為は、その後のウクライナ難民の受け入れ方とは全く違うもの。
だからと言って、すべての難民を受け入れるわけにはいかないし、すべてを優しく笑顔で丁寧に対応するわけにもいかないかもしれない。警備隊はテロリストの可能性がある人間を国内に入れるわけにはいかないし、優しく伝えたところで彼らはあっさり納得するだろうか。実際越境に失敗しても再び挑戦する者もいる。それだけ祖国は危険で、彼らは必死なのだ。
その国だけの問題と思っても、実際はすべてが繋がっている。
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