幼い頃に父が家族を捨てて別の女と再婚した過去を持つ男性で、自らも妻を得て舞台俳優として活動する卓。ある日その父が警察沙汰を起こしたとの連絡を受けて向かったところ認知症で記憶を失いつつある姿を目の当たりにした彼が、残された痕跡から行方不明になった父の再婚相手である直美の行方を追う様を描いたサスペンスドラマです。
本作でも父役を演じる藤竜也が主演を務める『コンプリシティ/優しい共犯』で長編映画監督デビュー作ながら多くの国際映画祭に選出されるなど高い評価を得た近浦啓が六年ぶりに制作した長編第二弾で、森山未來が演じる主人公が藤と原日出子の夫妻の過去を探る物語で前作と同様に各国の国際映画祭へと招待されて勢いを継続させました。
インパクトある「逮捕」から始め、そこに至るまでの過去の物語とそれを探る現在の物語を非線形で語り、所々舞台や二組の夫妻の関係らのエッセンスをリンクします。映画的工夫を狙っていても肝心の物語が予定調和でテーマとして掘りが浅いのでは作り手の独り善がりを感じますが、流石の存在感を持つキャストの熱演に支えらた一作です。