延命治療はどうされますか?父親を介護施設に入所させるに当たって施設からこう問いかけられる。それって今答えなきゃいけませんか。容赦のない問いかけに憤然としてそう言うしかない森山未來。
疎遠だった弟が入院した際、医者から呼び出されて情況説明を受けた後に、延命治療はどうされますか、そう問いかけられたことを思い出す。それってわたしが答えなくちゃいけないものなのか。心臓のパイプが通常の2、3割しか機能していないので同じことが今後も起こるそうなのだ。だからどうだというのか。本人に聞いてくれよと思う。
大学教授だった父藤竜也と母親は森山未來がまだ幼い時に離婚。打ち棄てられたと母親から言われていたのだろうか父親にいい感情を抱かず25年の月日が流れる。そして不意に父親に会いに行く。25年振りに会う父親。その家には彼の再婚した妻原日出子がいて、会いたかった、とそう言ってくれる。父とのぎこちない会話。/何か話でもあったのか。/いえ、特には。/それが父親には理解できない。根元的なのだ。
藤竜也と原日出子には結ばれるべくして結ばれたドラマがあって、それはこんなことだ。
少し前、ラジオ番組で女性の投稿が紹介された。夫と子どもたちと一緒に遊園地に行き遊んでいたら、昔愛し合った男と出逢った。男の方も奥さんと子どもたちを連れていた。ふたりは素知らぬ顔をしてすれ違うのですが、ある瞬間を見計らって男が女性に囁きかける。また、いつかどこかで出会うと思っていたよ、と。
その後、その女性と男がどうなったのかは定かではありませんが、藤竜也と原日出子は結ばれます。森山未來は母から聞かされていたことと違う事実を、ふたりの日記や手紙で知ることになるのです。
介護施設に入所した藤竜也の直近の姿が綴られ、愛し愛されていた原日出子は変わっていく夫の姿に翻弄される。そんな頃、森山未來に警察から連絡が来て、警察?父親の認知症を知る。妻真木よう子と介護施設で説明を聞いているシーンが頭書の部分。実家に戻り、ゴチャゴチャの家の中をみながらいるはずの原日出子の不在の大きさを知る。彼女は知っているのかしら、と真木よう子が森山未來に問いかける。スマホで連絡をとろうとしても徒に通信音が流れている。ん、と真木よう子が着信音に気付く。原日出子はスマホを置いて出奔しているのだ。
そんなミステリーじみたエピソードを交えて森山未來は父藤竜也の現在過去を追う。そして、介護施設に伝える。延命治療をお願いします。出来るだけ長く生きられるようにしてあげてください。未来は共にしようと決めたのです。