けーはち

利休のけーはちのレビュー・感想・評価

利休(1989年製作の映画)
3.6
茶人・千利休の秀吉との確執を描く歴史ドラマ。なぜ彼が死を賜ったのかの真相は歴史の謎なのだが、本作では物静かでも媚びない反骨のアーティストとして彼を描いている。たまさか茶の湯が流行したから時の人とされたが、本質的には一介の風流人、超然と生きる利休(三國連太郎)と、農民から成り上がり天下人となるもなお朝鮮出兵までも目論む欲深く人間臭い秀吉(山崎努)の不和が徐々に顕になる。登場する茶器は現代に現存する名器を使っており、生花は草月流の家元でもあった勅使河原監督自身の手によるもので、いささかセンスがモダンすぎるが、秀吉に衝撃を与えるには丁度良かろう。前半、茶や花を扱う時にバロック風の音楽が鳴るのは神に近い恍惚状態なのだろうが、バテレン追放令が出てからハタとなくなり、南蛮人の付き人も放逐され関係が悪化するのは象徴的。織田信長(松本幸四郎)、徳川家康(中村吉右衛門)、石田三成(坂東八十助)と重要人物を歌舞伎役者で固めたのも格調高さに寄与している。